数字の裏付け — 一次データと出典
本計画の主要数字を、実在する公開統計・市場データ・業界ベンチマークで裏付ける。各項目に出典を明記し、計画値が実データに対し『保守的 / 妥当 / 強気』のどこに立つかを示す。出典は確認できたもののみを記載する。
客単・コース価格
保守的所見 業態がほぼ同一の銀座きた福は、公式サイト掲載の標準コースが食材のみ¥40,000〜¥43,000/人、活ダブル蟹¥58,300、松葉¥50,000〜¥70,000(いずれも税・10%サービス料・ドリンク別)。コース帯¥29,000/¥42,000/¥57,000はこの実勢レンジ内で、最上位EMPEROR ¥57,000はきた福の上限ではない。荷重平均客単¥51,680(コース+ドリンク+重量課金タラバ+生バー+室料の全部入り)は、きた福の『食材のみ』レンジ上端(Chowhound報道で最大≈¥49,000)とほぼ同値。トップ鮨(さいとう¥49,000/すぎた¥50,000・2024)とも同水準。エントリー¥29,000はNobu最上位おまかせ¥28,000近辺。天井側は龍吟¥90,000〜¥170,000。headline avgCheck ¥48,000はボトムアップ¥51,680を約7%下方に丸めた値。
カニ原価・供給
妥当(実勢どおり)所見 5数値の実勢は次のとおり。(1)ロシア依存~90%: 実データ約91%(冷凍は実質99%)、水産白書も上位3か国6-9割。(2)冬ピーク季節性: 最安月比1.4-2倍(最大~4倍)。(3)活タラバ¥12,000/kg(豊洲活¥15,000×0.8): 松菱が生・活き¥15,000-20,000/kgと明示しアンカーは実在。豊洲のB2B業務用活タラバ実勢は¥4,000-6,600/kg、中型B2Cで¥6,000-9,000/kgで、コモディティ卸下限はこれを下回る。¥12,000/kgは『最上級・大型・身入り良・ピーク期の活個体』を仕入れる前提の単価で、サイズ/グレードを下げれば原価は圧縮余地がある。(4)原価率40-47%: 単一の市場統計で直接裏付く数字ではなく内部運営前提。最上級活タラバを主軸に置く場合、客単価次第で40-47%のレンジに収まる。(5)年15トン: 2024にロシアから約17,800t規模(冷凍ズワイ中心・king crab単体は約1,419t、冷凍タラバ系で約3,698t)が日本流入しており、15t調達は市場規模に対し小さい。供給制約より単一国依存(制裁/IUU/為替)が本質的リスク。
稼働・回転・需要
妥当(実勢どおり)所見 床稼働70%は飲食店の健全稼働帯(65-70%)の上端、全席ブレンドは66%でその帯の中。回転1.25は高級フルコース標準1.0を上回る(2部制設計前提)。需要側の一次データは、訪日富裕層59万人(JNTO確報)・東京ミシュラン507軒世界1位・JFディナーレストラン客数+6.0%。予約全件カード保証+前払いでノーショー(経産省 年¥2,000億)・訪日キャンセル25-30%(TableCheck)を抑える運用。損益分岐稼働は47%。
損益分岐(下方保護)
保守的所見 損益分岐稼働47%は固定費(人件費+賃料+償却+その他)÷貢献利益から導出(財務モデル)。業界の席稼働目安65-70%・シティホテル客室稼働74.2%を下回る水準で、稼働がこの目安を下回っても損益分岐を確保する。稼働70%の目標に対し、47%が損益分岐点。
ドリンク付帯・粗利
妥当(実勢どおり)所見 高級帯では妥当。NRAの全業態平均21%に対し約29%は高く見えるが、fine dining 特化の業界一次(SevenFifty Daily: 食事60-70%→ドリンク30-40%)では約29%は下端=シャンパーニュ/ワイン主導の高級店として整合。粗利73%も well-run ワイン/カクテル75-80%(Level CFO)・国税庁ワイン製造者データの範囲内。fine dining 特化データに照らせば平均超だが高級帯では下端の水準。
人件費・人員
妥当(実勢どおり)所見 人件費は日本公庫の西洋料理店38.1%・効率チェーン物語コーポ25.0%を一次ベンチとし、FOHサービスを厚くした24名体制で売上の約26%に設定。財源はサービス料10%(本来のサービス人員原資=売上計上)で、メニュー値上げはなし。一次ベンチは公庫西洋料理店/厚労省賃金/上場外食有報。
賃料
保守的所見 (1)坪単価¥40,000: 港区/中央区の『区平均』(¥34,000-35,000)を上回る水準。銀座(¥60,000-100,000)/六本木・麻布(¥50,000-80,000)の『路面1階』相場は¥40,000を上回るため、坪¥40,000は空中階・ビル内区画・赤坂寄り立地を取れた前提で成立する単価。視認性の高い路面を想定する場合の参照帯は坪¥60,000-80,000。(2)賃料=売上の5-7%: 業界黄金比率(理想7-10%、高額立地の実態~20%)の下限以下。客単価が高く売上が大きい超高級店で5-7%が成立する水準で、高売上の達成が前提条件。(3)算術整合性: ¥320万÷82坪≒¥39,024/坪で内部整合。
内装投資
保守的所見 内装¥2.5億・坪単価約¥298-313万/坪(¥2.5億÷80-84坪、中央値=約¥305万/坪)の位置づけ。(1)坪換算で米ファインダイニング旗艦build-outの$500/sqft帯(≒¥258-276万/坪@FX145-155)を約8-21%上回るが、東京の人件費/施工費優位を考えると国際旗艦級の実装余地として妥当。(2)職人内装の実在コンプ(ダラスNuri:AvroKO設計・特注石床/英国手描き壁紙/韓国100年陶器、$16M÷9,500sqft=$1,684/sqft≒¥869-929万/坪、Nobu Doha独立棟≒¥616万/坪)はいずれもこの約2.0-3.0倍で、内装¥2.5億はこれらラグジュアリー上限を下回る。(3)国内ガイダンス『高級レストラン¥100万/坪超』に対し3倍超を計上=旗艦オマカセ/活カニ超高級・客前解体パフォーマンスという positioning に対応。(4)『見せ場集中(FF&E・高級素材・特注照明)』への予算寄せは、FF&E 30-40%・厨房/MEP 45-55%という業界標準配分の範囲内。国内旗艦級の坪単価を直接記した一次統計は乏しく(国内ソースは一般¥40-80万・高級¥100万超までの提示)、本項は主に米/グローバル名門店コンプの坪換算に依拠。東京は人件費が米主要都市(NYC/SF $525-950/sqft)より低い。
出口評価
妥当(実勢どおり)所見 ¥12.4-29.8億 は完済後 正常化EBITDA¥248M に外食EV/EBITDA実勢5-12倍を当てた幅。中央8倍=¥19.8億 が基準。これは運営会社の株式価値であり投資家の予定キャッシュ回収額(計画値・業績連動)とは別軸(予定キャッシュ回収=貸付元本+利息+食材供給粗利の計画値)。上場外食の EV/EBITDA 実勢はすかいらーく約10.9倍、業種別 上場サービス業約11.3倍、M&A全業種目安6-8倍(中央値7.1倍)、最新M&Aコンプ Capstone 集計 trailing 8.6倍で、5-12倍レンジと整合。EBITDA定義も各社有報(すかいらーく/トリドール/物語)で確認。
市場・リスク
保守的所見 外食の倒産は実データで記録的高水準。東京商工リサーチ『2025年 飲食業倒産1,002件(1996年以降30年で初の1,000件超)』、帝国データバンク『飲食店900件(過去最多)』、サービス業他3,585件(30年最多)。俗に言う『3年以内に約70%が閉店』は政府統計と整合しない——中小企業白書の起業後生存率は3年で88.1%(全業種)、飲食はこれより低いが『70%閉店』を裏付ける一次データは無い。確かなリスクの signal は記録的な倒産件数。